胎児MRI研究会のこれまでの歩み

 近年、出生前に多くの胎児疾患が診断されるようになってきました。胎児診断の主役は超音波検査(以下、US)でありますが、羊水量や胎児の子宮内での位置、あるいは疾患の種類によっては、USのみでは十分な情報が得られない場合も少なくありません。
 一方、胎児MRI(以下、fMRI)は近年急速に発展し、胎児疾患の診断に有用な高精度の画像情報を提供する手法として注目されています。しかしながら、胎児領域にMRI検査を導入するにあたっては、いくつかの課題を克服する必要があります。

 第一の課題(放射線技師):胎児診断に有用な情報を抽出するためには、高い画質をもつfMRI画像を安定して撮像する技術が求められます。子宮内という特殊な環境における胎児画像を得るためには、専門的なノウハウと経験の蓄積が不可欠です。

 第二の課題(放射線科医):小児MRIと胎児MRIでは画像特性や読影の着眼点が大きく異なります。胎児特有の生理学的特徴や疾患像を十分に理解したうえで、正確な診断を行うことが求められます。

 第三の課題(周産期医師):USとfMRIの双方の特性を理解し、両者を適切に組み合わせて診断・治療に活かす臨床的判断力が重要となります。

 これらの課題を共有し、胎児MRIに関する知識と経験を学際的に高めることを目的として、2014年に放射線技師、放射線科医、産科医、新生児科医、新生児外科医など、多職種が一堂に会する形で「胎児MRI勉強会」が発足しました。その活動を基盤として、毎年「胎児MRI研究会」が開催され、本年で第10回を迎えるに至りました。
 各回では大会長の専門領域に応じてテーマを設定し、基礎的知識の普及とともに、実際の症例を通じたfMRI画像の共有・検討を重ねることで、本分野の発展に大きく寄与してまいりました。

 今後は、さらなる発展を目指し、新たな組織体として「日本胎児MRI研究会」を設立する運びとなりました。本会の活動を通じて、胎児MRIに関する研究と臨床応用が一層推進されることを心より期待いたします。

2025年11月1日
日本胎児MRI研究会 代表世話人 川瀧元良